-不自然な向日葵(ナミコと僕の夏)-

ナミコの悲しむ顔は見たくなかった

めったなことで、あれがほしいと言わないナミコが
園芸用品売り場で足を止めた、
「おとうさん!、あの向日葵の種がほしい」
パッケージには、普通に思い浮かべる向日葵ではなく、
小振りで可憐な向日葵があった、ナミコはそれに惹かれたようである

娘がほしがるならということで、僕は買い与えることにした

西日しか当たらない庭、片隅のプランターに植える
「芽がでるといいね」「うん」
穏やかな時間が流れる休日の午後であった

数日後、7本ほどの芽がでる、均等に間引いていく
「これで、もっとおおきくなるん?」「うん」

それから、順調に向日葵は成長していくかに思えた
が、なにぶん西日しか当たらない庭である....。
数本が枯れてきた
「もうこれあかんの」「うん...」

成長した向日葵はわずか1本
「もうすぐ花が咲くね!」「うん」

その一本の向日葵は
小さなプランターにしっかりと根を張り
半日しかあたらない太陽をしっかりと掴もうと
葉をめいっぱい広げていた
そして小さなつぼみをつけていたのである

ついに....
「おとうさん!つぼみがひらいてきた!!」
「うんうん、明日にはちゃんとひらいて花が咲くよ!!」
ナミコは満面に笑みをうかべていた

事件は、その後に起こった

「あっ!」
僕は全身から血の気が引いた

ナミコがよく見えるようにとプランターを動かしたのが間違いだった
プランターは僕の手をすり抜け、地面に落下
一本のだけの向日葵
その半分ひらいたつぼみは......折れていた

ナミコは、今ここにはいない!
ナミコの悲しむ顔は見たくなかった

脱兎の勢いで2階へと駆け上がりセロテープを持ってくる
そして..........なんとかその場をとり繕った

しかし、いったん、折れてしまったものは、
いくら修復しようとしても、もう二度と元には戻らない...
時間とともに、衰え、下を向いていく向日葵、
パッケージにあったような可憐な花を咲かせることはもうない

「なかなかぜんぶひらかないね」
「うん...お日様があまりあたらないからかなぁ.....」


僕は、不自然な向日葵を撮っていた
西日あたる庭
連続するシャッター音が熊蝉の鳴き声にかき消される

ナミコと僕の夏は終わろうとしていた